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2019年 07月 31日 ( 1 )

新田次郎「孤高の人」

半月ほど前のブログで山田詠美の「つみびと」を紹介したとき、夢枕獏の「神々の山嶺」についても触れた。
後者の本は、山友のAさんから、処分するつもりだから良ければと言われ譲り受けた文庫本だった。
その時一緒に「孤高の人」など10冊プレゼントされた。

大昔に「孤高の人」は読んでいたけれど、加藤文太郎という大正から昭和初期にかけて活躍した実在の登山家にスポットを当てた小説とは覚えていても、ストーリーはすっかり忘れていたので、改めて読んでみた。

槍ヶ岳冬季単独登頂や、富山県から長野県への北アルプス冬季単独縦走などで一躍有名になった加藤文太郎が、同行者と槍ヶ岳北鎌尾根で飲まず食わずで5日間の苦闘の末疲労凍死する小説の終盤は、圧巻だった。

わざわざ小説と書いたのは、何時も単独行の加藤文太郎が、同行者の宮村(本名、吉田)から強引に頼まれて嫌々同行し、なおかつ山行中の宮村の振るまいが、読者に嫌悪感を抱かせる記述になっていて、あくまで新田次郎は、加藤文太郎を悲劇のヒーローに仕立てているのだが、実際は加藤から岩登りの得意な宮村に同行を依頼し、山行プランも加藤が立てたらしい↓
古いヤマレコでも、遭難死の実態は小説と違うとあり、「孤高の人」が売れたこともあって、文中で悪役?にされた宮村=吉田さんの遺族関係者に非難が集中し、今でも心を痛めているそうだ。
いくら小説とは言え、新田次郎も罪作りな人だ。

と言いつつ、新田次郎(本名藤原寛人)は同じ組織に属した人。年齢が離れすぎて全く面識はないけれど。
彼の処女作「強力伝」は、昭和30年の直木賞を受賞したそうだ。
だが、新田次郎の現職時代の作だから、色々羨望ともやっかみとも付かない声を職場で聞いたことがある。

蛇足だが「孤高の人」は、新田次郎が富士山観測所に勤めている頃、交替要員として富士山への登頂中に、追いついてきた加藤文太郎と言葉を交わしていて、そのことがこの本のきっかけとなったらしい。

蛇足ついでに、昭和39年に富士山山頂に気象レーダーを設置したとき、本庁の測器課長としてその大任を果たしたらしい。
5代目の中央気象台台長(今の気象庁長官)だった藤原咲平は、彼の伯父(叔父?)だそうだ。

まあ、何れにしても私には雲の上の人達だ。
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「孤高の人」を読んだ後、加藤文太郎のことをもっと知りたくて、「単独行者」を昨日図書館から借りて来た。著者も海外の山まで出かける熟達登山者らしい。加藤文太郎の妻からも取材したとは書いていないけれど、こちらの本の方が加藤文太郎の実際の人物像に近いらしい。それにしても、加藤文太郎の妻は20歳そこそこで結婚し、すぐに長女が誕生したものの、結婚生活僅か1年で未亡人。それから長女の登志子を一人で育て71歳で亡くなったそうだが、そんな妻の花子さんが健気であっても、何とも気の毒に思えてならない


by tarumae-yama | 2019-07-31 07:48 | 日々の出来事 | Comments(2)