5月3日、ピリカヌプリ3日目

テントを揺する程の強風が吹き、寒さもあって寝袋の中でまんじりともしない夜を過ごした。

4時頃起き出すと、相変わらず風が強い上にピリカヌプリの頂上部には険悪な雲が巻き付いている。
痩せた尾根上で強風にあおられる恐怖を思うと、登頂を断念してこのまま帰ろうかと言う弱気な気持ちが沸いてきた。
それに、昨日テン場から白く輝くピリカヌプリを間近でタップリと堪能したのだからという自分を納得させるような思いもあった。

だが、朝食を摂っているうちにピリカヌプリを覆っていた雲が取れだし、行けるところまで行って駄目なら引き返そうとなった。
5時50分、アイゼンにストックというスタイルでテン場を出発したが、早朝にも拘わらず時々足が埋まり出し、途中でワカンに切り換えた。
1時間程下ったところに「ポロシリ隊」のテントが2つあった。
ソエマツ岳までピストンとの事だから我々よりずっと早く出たらしく、人の気配は全くなかった。

最低コルには7時10分に到着。春別山から250m下り、ここからピリカヌプリの頂上まで一気に530m登る形になる。
テン場から付いていた「ポロシリ隊」の足跡は、途中でつぼ足からアイゼンに変わった。
傾斜が増したこともあり我々もワカンからまたアイゼンに履き替えた。

やがて森林限界を越え、いよいよ細尾根の核心部。頂上から西に延びる尾根にたどり着くまでアイゼンの爪を引っかけて転ばぬよう細心の注意が必要な区間。
ここがカリカリに氷化していたら引き返そうと決めていたのだが、柔らかな上に「ポロシリ隊」の踏み跡がしっかりと残っていた。
それにしても、両側がすっぱりと切れ落ちているから、恐ろしくて自分の足下以外とても視点を移せない。
やがて頂上は目前となったが、それまでのトレースが突然なくなった。
見渡すとそれはソエマツ岳に向かって延びていて、どうやらピリカヌプリは帰りに踏むと言う事なのだろう。

さすがに頂上付近は雪が固く締まっていたから、アイゼンの爪をしっかり食い込ませ、9時35分に念願のピリカヌプリの頂上に立った。
Aさんから声がかからなければなし得なかった「北海道新聞社」が選定した北海道100名山達成の瞬間である。
「山と渓谷社」が選定したもう一つの北海道100名山を達成してからほぼ5年が経っている。
頂上でしっかり感謝の握手を交わし、3度目のAさんも今回が一番眺望に恵まれたと嬉しそうだった。

トヨニ岳からの登山者もなく、10時15分、我々は上層雲が厚みを増してきた頂上を後にした。
下山中の稜線上で、ソエマツ岳から下りてピリカヌプリに向かってくる豆粒のような人影が目に入った。

気圧の谷が近づいてくるとの予報に、今日は春別山の頂上から1日目のテン場まで下りる事に半ば決めていたのだが、最低コルから春別山までの登り返しは、ワカンでも埋まる程雪が腐ってひどく疲れてしまった。
やっとのこと春別山のテン場に到着したのは13時45分。
もうテントを担いで下りる元気はなく、それでもAさんは悪天に備え、ブロックで雪壁を2段に補強、テントが飛ばされぬよう近くの木にロープで結んだ。
私はと言えば、2台のガスコンロでせっせと雪を溶かし飲料水造りであった。

缶ビールと夕食のカレーライスで登頂のお祝いをし、寝袋に入った18時半、テントを雨がたたき出し、夜の間中強風と雨で大荒れとなった。
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ピリカヌプリの右から太陽が上がってきたが、目指す山は雲の中
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ピリカヌプリを覆っていた雲がドンドン取れだした
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ソエマツ岳(右端)に向かった「ポロシリ隊」のテント
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下を覗くのも恐ろしい程
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「ポロシリ隊」のトレースがなくなり慎重に頂上へ向かう
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アイゼンの刃を食い込ませ頂上に向かうAさん
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9時35分ピリカヌプリ頂上に到着。中央付近にペテガリや1839峰
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頂上で風除け付き展望台?を作成中のAさん
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神威岳を右に見ながらの下山
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尾根が細く、下を見るのが怖くて自分の足下だけで精一杯。向かいの円内に春別山頂上の我々のテント場
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円内にピリカヌプリに向かってくる「ポロシリ隊」 写真の上でクリックすると大きくなります
by tarumae-yama | 2010-05-07 16:21 | 北海道100名山 | Comments(4)
Commented by mink330 at 2010-05-07 19:54
tarumaeさん、こんばんは!
すばらしい写真、感心、感動して見せていただきました。
山に登ったことのない私が絶対目にすることのない写真。

登山用語で分からない言葉が沢山ありましたが、それより
この山を登るぞ~という、意気込みが感じられて全部読ませて
頂きました。

北海道100名山達成、感慨深い物が会ったと思います。
おめでとうございます。
Commented by tarumae-yama at 2010-05-08 09:44
mink330さん
コメント有り難うございます。登山中、天気に恵まれたので雄大な景色を写真に納めることが出来ました。楽しんで頂けたのなら嬉しいです。
実は、4月下旬に別の山の知人からも声がかかったのですが、今回の計画が先に決まっていたので断りました。そのパーティは悪天に遭い撤退したそうですから、実力があっても天気や残雪のタイミングなど運にも左右されます。我々は多くの条件に恵まれ本当に幸運でした。
Commented by yah-_-yah at 2011-06-24 20:41
こんばんは。
さっそくAさんと共に登頂を成し遂げたピリカヌプリの記事を読ませてもらいました。
ピリカヌプリとは聞いたことがなかったのですが、それもそのはずです。
登山初心者の僕にはまったく縁のなさそうな山です。

それにしても文章を読み、写真を見て、その場を想像するだけでもゾクゾクしました。
登る時の緊張感、登りきった時の達成感を感じました。
でも山は登って終わり、じゃないんですよね。改めて。
降りるときにも同じように、また登る時以上の危険が伴うし、いい天気が続くとも限らない。
天気が悪くなってもいずれは降りなきゃならないから、登ってしまった後の方が大変とも言えますね。

それにしてもこんな山を登る山男(&山女)達ってスゴいと思います。
人間の浪漫ですね。
Commented by tarumae-yama at 2011-06-25 08:18
yahさん
長いコメントを有難うございます。
誰でもが最初は全くの初心者なのですから、好きになれば冬山に登ることも出来るようになると思います。
私は残雪期の山は好きなのですが、冬にテント泊をするような力量はありません。
yahさんがどんどん力をつけて、素晴らしい山岳写真をものにすることを楽しみにしています。
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